住宅ローン減税の改正及び住宅ローン控除の適用と居住用不動産を譲渡した場合の3000万円特別控除の適用
(1)改正
適用期間の延長
令和4年度税制改正によって、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅ローン減税)について、適用期限が令和7年12月31日まで4年間延長されるとともに、環境性能等の優れた住宅の普及拡大を推進するため、住宅の種類に応じた控除率や控除期間などの改正が行われました。
この改正は、住宅の取得等をして令和4年1月1日以後に居住の用に供した場合について適用されます。
認定住宅等
認定住宅等の控除率については0.7%、控除期間について13年となり、借入限度額については
居住開始年に応じて次のとおりです。
①認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)=令和4,5年居住の場合は5000万円、令和6,7年居住の場合は4500万円
②ZEH水準省エネ住宅=令和4,5年居住の場合は4500万円、令和6,7年居住の場合は3500万円
③省エネ基準適合住宅=令和4,5年居住の場合は4000万円、令和6,7年居住の場合は3000万円
ただし、既存住宅の取得の場合は、控除期間については10年、借入限度額については一律
3000万円となります。
ZEN水準省エネ住宅
ZEN(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス) 水準省エネ住宅とは、外皮の断熱性能等を大幅に向上されるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅とされています。
認定住宅等以外の住宅
認定住宅等以外の住宅の控除率については0.7%、控除期間については、令和4,5年
居住の場合は13年、令和6,7居住の場合は、10年です。
借入限度額については令和4,5年居住の場合は3000万円、令和6,7年居住の場合は、2000万円となっています。
ただし、既存住宅の取得または住宅の増改築等の場合は、令和4,5年居住の場合であっても控除期間については10年、借入限度額については一律2000万円です。
所得金額要件の引下げ
適用対象者の合計所得金額要件は、2000万円以下(改正前は、3000万円以下)に引き下げられました。
適用範囲の拡大
家屋の床面積要件は、改正前は50㎡以上でしたが、適用要件が緩和されて床面積が
40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋で、令和5年12月31日以前に建築確認を受けたものの新築またはその家屋で建築後使用されたことのないものの取得についても、適用対象とされました。
ただし、その場合の適用対象者の合計所得金額要件は、1000万円以下となります。
(2)居住用不動産を譲渡した場合の3000万円特別控除の適用
令和2年の税制改正で、住宅ローン控除の規定の「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」に改正されました。これは、会計検査院が措置法特典の不適正な重複適用として実態報告をしたことに端を発しています。会計検査院の検査報告によると、新居を購入して住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に旧居を売却して居住用資産譲渡の3000万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成28年、29年の2年間で37人いたとしています。そして、この37人の重複減税額の合計が5011万円であった、としています。税率で割った一人当たり平均譲渡益は900万円前後です。
会計検査院の検査した事例のように、最近は住宅の譲渡で譲渡益が出るという傾向が顕著になっています。昭和の土地バブルの時代には、頻繁に住宅を買い替えることにより、よりリッチな物件に住み替える、という事例が沢山ありました。所有によりアパート賃料分が留保されるだけでなく、所有により含み益が蓄積される、という効果が人の心を動かしました。
現在は、マンションバブルの傾向を示しています。首都圏では2000年以降、近畿圏では2010年以降に建築した中古マンションの譲渡価格が新築時の価格を上回る傾向にある、との民間公表データもあります。譲渡益も、建物の減価償却があるから譲渡益が出るのではなく、その償却額を超える譲渡益が出る、という事です。
今はマンションに住み替えの都度、譲渡益が発生する時代になっています。そして、期間が3年超ならば、3000万円控除の連続適用が可能です。さらに、住宅ローン控除の適用を受けていたとしたとしても、その居住物件の譲渡による譲渡益に対する3000万円控除の適用も可能です。
紛らわしいところですが、同一物件に係る譲渡益に対する3000万円控除の適用と住宅と住宅ローン控除の適用とには、特例併用の制限はされていません。会計検査院の指摘は、異なる物件での住宅ローン控除と3000万円控除の重複適用の場合の事なので、同一物件での重複適用に対する注文ではなかったのです。