給与所得者における特定支出控除
特定支出控除
給与特定支出の額の合計額が、その年中の給与所得控除額の2分の1を超えるときは、確定申告をすることによってその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。
これを給与所得者が特定支出をした場合、その年の所得者の特定支出控除といいます。
特定支出
特定支出とは、給与所得者が支出する次に掲げる支出のうち一定のものをいいます。
①通勤費
(一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出)
②職務上の旅費
(勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出)
③転居費
(転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出)
④研修費
(職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
⑤資格取得費
(職務に直接必要な資格を取得するための支出)
⑥帰宅旅費
(単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出)
⑦勤務必要経費
(次に掲げる支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの、上限65万円)
ⅰ図書費
(書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用)
ⅱ衣服費
(制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用)
ⅲ交際費等
(交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出)
令和2年分の改正点
特定支出について、令和2年分から次の改正が行われています。
①特定支出の範囲に職務上の旅費が追加されました。
②帰宅旅費について、従来の「当該旅行に要する運賃および料金」に「当該旅行に要する自動車その他の交通用具の使用に係る燃料費および有料の道路の料金」が追加されました。
③帰宅旅費について、1月に4往復を超えた旅行を対象外とする制限が撤廃されました。
支払者の証明等
特定支出については、いずれについても給与の支払者が証明したものに限られます。
また、給与の支払者から補てんされる部分があり、その補てんされる部分に所得税が課税されていないときは、その補てんされる部分、および教育訓練給付金、母子(父子)家庭自立支援教育訓練給付金が支給される部分は、特定支出から除かれます。
おわりに
近年における改正で特定支出控除の特例の適用範囲は拡大されてきており大分利用しやすくはなりました。しかし、依然としてハードルは高く利用する納税者も少ないことから普及には時間がかかるものと思われます。
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